今回は、独特な世界観のある和風ファンタジー作品を紹介したいと思います。
羽衣伝説と竹取物語のエッセンスを取り入れた「水無月家の許嫁」や、神話に由来する八つの家が支配する千和国の王宮を舞台にした「王と后」、現代日本を舞台に人間とばけものが共に暮らす世界を描く「ばけもの和紙庵の花嫁さん」など5作品を選びました。
※若干ネタバレしていますので、気になる方はご注意下さい。
友麻 碧「水無月家の許嫁」
特殊な境遇に置かれた若い2人のピュアなラブストーリーです。
父の死に絶望していた六花は、水無月家本家での新しい生活が始まり、文也の支えによって身も心も徐々に救われていきます。しかし、その穏やかな日常も長くは続かず、やがて水無月家のお家騒動に引き込まれていきます。六花と文也は、天女の末裔である水無月家の特殊な宿命に縛られながらも、本当の愛を追い求め、心の葛藤を乗り越えていきます。
この物語の魅力は、ファンタジーと現実が絶妙に混ざり合った独特の世界観と、六花と文也の心の葛藤が丁寧に描かれている点です。また、恋愛要素だけではなく、家族愛や親の世代から続く因縁、そして複雑に絡み合う人間関係も描かれている点も見所です。
現在3巻まで発売されています。
浅木伊都「火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています」
「火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています」コミックシーモア
火の神の掃除人兼花嫁となった小夜と、呪われた火の神・鬼灯の大正溺愛ファンタジーです。
小夜が掃除人として迎えられたと思っている一方で、鬼灯は小夜を掃除人としてではなく、いずれ名実共に自分の花嫁にするつもりでした。最初は食い違いがありましたが、2人は周囲の思惑に巻き込まれながらも夫婦として絆を深めていきます。また、自己評価の低い小夜でしたが、鬼灯に大事にされ、「蝶の耳」の力を活かして鬼灯の役に立つことに喜びを見出し、徐々に自分に自信が持てるようになっていきます。物語には、本を司る神・扇や豊玉姫といった神々など個性豊かなキャラクターたちが登場し、それぞれが独自の魅力を放っています。
現在3巻まで発売されています。
顎木あくみ「人魚のあわ恋」
和洋入り交じる華やかな帝都を舞台に、痣によって人生を狂わされてきた朝名と咲弥の運命の恋物語です。
2人の縁談は時雨家の言い伝えを信じる咲弥の祖父が仕組んだことでした。朝名は自分の身も顧みず、咲弥を悪鬼のような父や兄の手から守ろうとします。一方の咲弥は、祖父の願いを叶えるためだけに縁談を受け入れましたが、次第に朝名に惹かれていきます。2人は互いを思いやりながら、少しずつ心を通わせていきます。しかし、周囲には2人の仲を切り裂こうとする人たちがいます。これから2人が共に望む平穏な生活を送るためには、幾多の困難に立ち向かう必要がありますが、深い絆で試練を乗り越えていくことでしょう。
現在1巻まで発売されています。
深山くのえ「王と后」
神話に由来する八つの家が支配する千和国を舞台に、名ばかりの后・淡雪と中継ぎの王と呼ばれる鳴矢のラブストーリーです。
千和国では王の代替わりのたびに、天羽家の娘が后兼巫女として迎えられていました。しかし、七家と天羽家のとの関係は長年の隔絶で悪化し、天羽の娘は后とは名ばかりで、人質同様で後宮の館に閉じ込められていました。しかし、王の鳴矢は后となった淡雪に恋をしてしまい、淡雪と本当の夫婦になることを望みます。一方、淡雪も鳴矢の隣に堂々と立つために、真の后になることを決意します。2人は思いを一つにしますが、前途多難の道のりになりそうです。中継ぎの王、名ばかりの后ということで軽んじられている中で、2人はどのようにこの状況を打破していくのでしょうか?
現在4巻まで発売されています。
糸森環「ばけもの和紙庵の花嫁さん」
人間とばけものが共存する現代の函館を舞台に、傷心の桃子とばけもの元親のお見合からはじまるラブストーリーです。
人間とばけものが共存していても、同族同士の結婚が一般的です。同じ食糧でいいのか?寿命の違いは?夫婦生活は?当然不安なことが様々出てくる訳ですが、傷心中の桃子は破れかぶれな気持ちから、「お試し夫婦」を提案します。香代子のおせっかいもあって、2人の関係はトントン拍子に進んでいきます。桃子は元親が営む和紙屋「こより庵」で手伝いをするようになり、そこで様々な人やばけものと出会い、不可思議な出来事を経験することになります。
1巻完結。
最後に
今回は、和風ファンタジーの中でも独特な世界観のある作品を取り上げました。
羽衣伝説や人魚伝説などを題材にした物語、神々やあやかしが登場する物語、中にはちょっと血なまぐさい要素があるものや、ほっこりするものまで、様々なタイプの5作品を選びました。
どの作品も読みやすく、予想がつかないストーリー展開が魅力です。もし気になる作品が見つかりましたら、ぜひ一度読んでみてください。