
「後宮の検屍女官」を紹介したいと思います。
大光帝国の後宮では、「死王が生まれた」という怪談が広まっていました。その騒動の最中、皇后から後宮の夜警支援を命じられた中宮尚書・延明は、夜警中にのんきに居眠りをする女官・桃花に気づきます。ものぐさなぐうたら女官の桃花でしたが、実は優れた検屍術を持ち、遺体を前にすると凛と豹変するのでした……。
ぐうたら女官・桃花と美貌の宦官・延明が、陰謀や謎が渦巻く後宮で怪事件に挑み、真実を追う中華後宮ミステリーです。
現在7巻まで発売中です。
※若干ネタバレしていますので、気になる方はご注意下さい。
「後宮の検屍女官」の詳細情報
著者 小野はるか
ジャンル 小説
出版社 KADOKAWA
発売日 2021年4月23日
著者のプロフィール
小野はるか
福島県在住。「ようこそ仙界!鳥界山白絵巻」で第13回角川ビーンズ小説大賞〈読者賞〉を受賞してデビュー(刊行時『ようこそ仙界!なりたて舞姫と恋神楽』に改題)。「後宮の検屍妃」(刊行時『後宮の検屍女官』に改題)で第6回角川文庫キャラクター小説大賞〈大賞〉〈読者賞〉をダブル受賞。近著に『星降る宿の恵みごはん 山菜料理でデトックスを』『チーズ店で謎解きを』(光文社文庫)がある。
引用元:「後宮の検屍女官」の巻末に掲載されているプロフィール。
あらすじ
「死王が生まれた」大光帝国の後宮は大騒ぎになっていた。
謀殺されたと噂される妃嬪の棺の中で赤子の遺体が見つかったのだ。
皇后の命を受け、騒動の沈静化に乗り出した美貌の宦官・延明(えんめい)の目にとまったのは、
幽鬼騒ぎにも動じずに居眠りしてばかりの侍女・桃花(とうか)。
花のように愛らしい顔立ちでありながら、出世や野心とは無縁のぐうたら女官。
多くの女官を籠絡してきた延明にもなびきそうにない。
そんな桃花が唯一覚醒するのは、遺体を前にしたとき。彼女には、検屍術の心得があるのだ――。
後宮にうずまく数々の疑惑と謎を検屍術で解き明かす、中華後宮検屍ミステリ!
引用元∶「後宮の検屍女官」ブックライブ
登場人物
姫 桃花(き とうか)
寵妃の侍女。
桃の花のような愛らしい顔立ちの女官。
生家は代々つづく検屍官の家系で、13歳で姫家の養女になるまで、祖父の検屍の手伝いをして学び、検屍術とは冤罪を無くす術だと教えられました。
「あれはぐうたら寝ること以外に野心を持たぬ、言うなれば老猫です」(by延明)
孫 延明(そん えんめい)
中宮尚書。皇后に仕える宦官。
狐精(美しい妖狐)とたとえられる美貌の持ち主。
穏やかに見えつつ妖しげな『妖狐の微笑み』が代名詞。
名家の嫡男で、父は太子の太傅でした。祖父と父は無実の罪を着せられて自ら命を絶ちますが、延明は友人である太子の嘆願によって、死罪から腐刑(生殖能力を奪う刑)に減刑されました。
「笑顔が嘘くさくて腹黒そうな方」(by桃花)
おすすめポイント
大光帝国の後宮では、「死王が生まれた」という怪談が広まっていました。謀殺された妃嬪が死後に赤子の幽鬼を産み落とし、その幽鬼が母の怨みを晴らすため、謀殺の首謀者をさがして夜な夜な後宮を這いずり回っていると。皇后から後宮の夜警支援を命じられた中宮尚書・延明は、他の夜警女官が恐怖に震える中で、のんきに居眠りをする若い女官・桃花に目を留めます。
桃花は花のような愛らしい顔立ちに似合わずものぐさなぐうたら女官でした。しかし、生家が検屍官の家系で、検屍術を学んでいた桃花は、遺体を前にすると凛と豹変するのでした。そして、桃花は「検屍術とは、冤罪を無くす術なので無冤術というのだ。死者の声を聞き、罪なき虜囚をすくうすべだ」と語ります。この言葉は延明の胸に響きます。延明はかつて冤罪により腐刑(生殖能力を奪う刑)を受け、浄身(宦官)となっていました。後に潔白が証明され身分を回復したものの、人間としての尊厳を傷つけられ、生涯消えない深い傷を負っていました。
後宮では皇后派と寵妃派が対立する中、不審な死体が相次いで発見。延明は優れた検屍術を持つ桃花に助けられ、事件の裏に隠された真相を明らかにしていきます。困難な状況の中で、延明と桃花は協力し合いながら、友として絆を深めていきます。しかし延明は、桃花に友情以上の思いを抱えていて、自身が宦官であることに苦悩するのでした。
物語は、延明と桃花の検屍術による事件の解明だけでなく、陰謀渦巻く後宮を生き抜く宦官や女官たちの過酷な状況も描かれています。
コミカライズ作品
最後に
今回は、「後宮の検屍女官」を紹介しました。
名家出身でありながら宦官として生きることになった延明の苦悩と孤独は計り知れません。そんな延明にとって桃花との出会いは大きな救いとなります。とはいえ、身分や立場のことなる2人の関係が今後どう展開するのか、読者としては気になるところです。
女官・桃花と宦官・延明が、後宮内で次々と起こる謎めいた事件の真相に挑む中華後宮ミステリーを読んでみてください。